早稲田大学大学院の講座「サステナブルな事業/投融資の探求」#5

第五回目は、株式会社日本政策投資銀行(以後DBJ) の福吉隆行氏より「ESG金融における銀行の役割について―サステナブルファイナンスの現場より―」をテーマにお話しいただきました。

第一回目の総論講義にて説明のあったサステナブル投資の生態系の中では、今回は銀行に当たります。

講義では主に以下に関して、説明がありました。

  • 銀行のビジネスモデルについて-サステナビリティのための金融入門-
  • 日本政策投資銀行の取り組み-非財務情報を考慮した評価認証型融資-
  • まとめ:社会課題の解決のために、銀行はなにができるか。

についてです。

「銀行とは、川の流れのようなものである(渋沢栄一)」、つまり銀行は営利企業であるとともに、社会的・公益的インフラの役割があると言えると思います。さらに説明すると、銀行の主な付加価値とは金利(利子のやりとり)でその金利が意味するものを理解することで、銀行の金融機能の役割・本質、そしてESG金融との繋がりが見えてくると紹介されました。

元来、ESGを考慮したお金の流れは、株式投資と言った直接金融を中心に広まってきたといえますが、間接金融(銀行機能)で考慮することの違いと意義に関して、ご紹介頂きました。間接金融においては企業ではなく銀行が情報生産の主体となること、また、外部不経済や情報の非対称性との付き合い方が銀行業務の課題となる中、企業における負債による資金調達の6割以上を占める銀行融資の役割の大きさを説明頂きました。

例えば、地銀であれば、地元と向き合い、地元の企業が成長すれば、自ずと、ESG金融が広がると認識・理解しやすくなるのではないか、また、ESGはきれいごとではなく、本質として捉えてもらいたいと思うとのことでした。

銀行が融資を通じて担える役割の例として、DBJでの取組みをご紹介頂きました。DBJでは、評価認証型融資(環境格付、BCM格付、健康経営格付)や対話型サステナビリティ・リンク・ローン(SLL)を主に実施しています。格付融資では、地元の中堅企業から大手企業までと幅広く行っていますが、融資を受ける側にとっては格付の付与以上に、その取得の過程でDBJが行っているフィードバックが喜ばれています。

昨今では、欧州等からの枠組みが本邦においても、サステナビリティ・ファイナンスとして資金調達の分野でも急速に広がっています。当初は、資金使途が再生可能エネルギーなどに限定されるグリーンボンドやグリーンローンが中心であったところから、資金使途が非限定であり、全社的な取り組みを評価するサステナビリティ・リンク・ローン(SLL)(企業が定めるESGに関するKPIを条件に連動させる融資)がグローバルな原則の設立と共に国内外で広がりを見せていると説明されました。より広い対象の企業が長期的にサステナブルなビジネス展開を行うに辺り、国際的な枠組みを踏まえつつ、DBJがこれまで培ってきたサステナビリティに関する対話能力を組み合わせ、創設されたのが対話型S L Lであると述べられました。

まとめとして、銀行セクターにおける急速なサステナビリティの動きの中、直接金融である「ESG投資」の届かない隙間へ貢献する、銀行ならではのESG金融の生態系における役割は何か、改めて問いかけがありました。

受講生からの関心も高く、本質的な銀行業務、ESG考慮型の金融、そして本業を通じたサステナビリティへの貢献を改めて認識する良いきっかけとなりました。

※執筆担当…岡田敦(JSIF運営委員)

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