第七回目となる今回は、MSCI ESGリサーチの粟野 瑞季氏をお招きしてESG投資の評価についての講義を行いました。第一回目の総論講義にて説明のあったサステナブル投資の生態系の中では、今回は評価会社に当たります。
講義では3つのパートにわけて説明がなされました。
- ESGのトレンド
- ESG格付け・企業コミュニケーション
- ESGにおける指数・情報提供会社の役割
についてです。
まずESGを投資戦略に組み込んだり、商品を開発したりするには、顧客の目的を理解することから始まる点が述べられました。
ESG投資が飛躍的に伸びている背景としては、
- 企業のESG関連の出来事に対する投資家の許容度が下がっている点
- 投資家が、行動することにより意欲的になっている点
- 潜在的な金銭的利益への理解が深まってきている点
- ESG格付けの改良
という4点があげられました。特に1.では、30年前のバルディーズ号事件の際には当社の株価はほぼ動かなかったにも関わらず、10年ほど前から企業のESGに関連する不祥事が起きた際に株価が急落する例が増えている点が示されました。
次に、ESG格付けのメソドロジーとプロセスが説明されました。MSCIにおいては、規制・自主開示を含む企業の公開データおよび研究機関などが公開しているオルタナティブデータを用いて分析が行われます。格付けモデルにおいては、産業別と共通のキーイシューが特定され、リスクにさらされている度合いの観点からリスク管理戦略を評価する手法が紹介されました。他社との評価が違う場合については、メソドロジーの違いによるものでもある点が説明されました。
企業コミュニケーションについては、独立性・一貫性・透明性が重要な柱であることが示されました。
投資家のESGのデータニーズが高まっているなか、指数・情報提供会社の役割はますます重要になってきています。アセット・オーナーによるESG指数の採用が市場全体に与えるインパクトについても触れられました。
※執筆担当…御代田有希(JSIF運営委員)