早稲田大学大学院の講座「企業の社会的責任と責任投資」#8

第八回目となる今回の講義は、SOMPOホールディングス株式会社より村上歌奈子氏、田辺 敬章氏をお招きして、二部構成で実施されました。

まず村上氏が「保険業界におけるESGリスク評価と将来」について、次に「サステナビリティにおける官民協働の現実(金融行動原則を事例に)」として環境省に出向されていた田辺氏がお話し下さいました。

第一回目の総論講義にて説明のあったサステナブル投資の生態系の中では、SOMPOホールディングスはグループ会社として投資家、保険会社、運用会社という複数の顔を持ちますが、今回の講義では損害保険会社としての視点に焦点を当てて話して頂きました。第二部は省庁に当たります。

第一部として、保険会社の観点から

  1. 当社のあゆみとサステナビリティの推進体制
  2. 保険業界を取り巻くサステナビリティ動向
  3. 取組事例と今後の課題

の3点について説明がなされました。

創業の原点として江戸時代の火消しの精神が脈々と受け継がれ、環境問題と市民社会との連携が鍵とされている点と、保険会社の「公共性」が説明されました。より経営に近い形でのサステナビリティへの取り組む会社内での体制の変更、3,000人近いCSRリーダーを各地で選出して能動的な対話を行うなど、全社を挙げての具体的な活動も紹介頂きました。

保険会社の役割は、大きく①資金の提供者(機関投資家)と②万一の時の補償(保険)に分けられます。どちらもESGが深く関わる点が示され、持続可能な保険原則について紹介がありました。

続いて国際的な動向として、各ステークホルダーからの動きが説明されました。そして、昨今の異常気象による火災保険金の支払額が増加傾向にある中、安定的な保険提供の観点からリスク管理の重要性が示されました。

最後に気候変動対策としての金融、保険の役割として、エンゲージメント、緩和・適応に資する商品・サービスの開発・提供、リスク管理の高度化が重要であるとの考えが示されました。

第二部として、環境に焦点をあて、省庁の視点から以下のポイントで説明がなされました。

  1. 脱炭素化の方向性
  2. ESG投資を巡る国際的潮流
  3. 政府及び環境省におけるESG金融の取組

についてです。

まず2050年までに温室効果ガス排出量を80%削減する必要があり、化石燃料が座礁資産化するリスクがある点が示されました。

続いてPRI(責任投資原則)の盛り上がり、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)がなぜ重要になってきているかについて説明されました。
そして、環境省支援のもと採択された「21世紀金融行動原則」と、ESG金融懇談会について紹介がなされました。

最後にESGの領域の拡大、SRIからESG投資、さらには投資家の関心が長期的な価値や投資のインパクトを重視するようになる中、それを意識する重要性が示されました。

※執筆担当…御代田有希(JSIF運営委員)

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