PRIの分類
PRIは2006年に設立されたが、主に年金基金などのアセット・オーナーが、ESGの課題を投資プロセスに組み込むことを広める目的でスタートしている。PRI の署名機関は、自ら投資資金を保有するアセット・オーナーである年金基金や保険会社、またそうした資金などを受託して運用するアセット・マネージャー、投資指数や金融に関する情報サービスを提供するサービス・プロバイダーである。
PRI の原則は次の6つからなる。(カッコ内は筆者)
- 私たちは投資分析と意思決定のプロセスにESG課題を組み込みます(incorporate)。
- 私たちは活動的な所有者(active owner)となり、所有方針と所有習慣(ownership policies and practices)にESG問題を組入れます(incorporate)。
- 私たちは、投資対象の企業に対してESG課題についての適切な開示を求めます。
- 私たちは、資産運用業界において本原則が受け入れられ、実行に移されるように働きかけを行います。
- 私たちは、本原則を実行する際の効果を高めるために、協働します。
- 私たちは、本原則の実行に関する活動状況や進捗状況に関して報告します。
PRI署名機関はその活動をPRIへ毎年報告することを求められているが、その際はレポーティング・フレームワークに基づいて行う。このフレームワークの用語集として、PRI Reporting Framework Main definitions November 2018 がある。報告の際に使われる用語の分類と定義をまとめたものである。この用語集から関連箇所をまとめると、以下のようになる。
① ESG incorporationの定義
PRI の原則1で、投資分析と意思決定プロセスにESGを組み込む(incorporation)ことを記載している。当報告フレームワークでは、投資決定プロセスでESG情報を検討し活用する
ことをESG incorporationと呼ぶ。
報告フレームワークは、これを実現する投資方法として次の4つを取り上げる。
- スクリーニング
- サステナビリティをテーマとした投資(環境・社会をテーマとした投資とも呼ばれる)
- ESG課題の統合(Integration of ESG issues)
- 上記の組み合わせ
エンゲージメント・アプローチのみが適用され、上記の戦略のいずれも適用されない資産は、ESG incorporationに含めるべきではない。
責任投資業界における標準化とコミュニケーションを向上させるために、PRIは、GSIAの定義と整合させている。
報告フレームワークにおけるスクリーニング3 種類の定義は以下の通りである。
投資のスクリーニング
a. ネガティブ/排除的スクリーニング
特定のESG基準に基づき、特定のセクター、企業、慣行をファンドやポートフォリオから除外すること。
b.ポジティブ/ベスト・イン・クラスのスクリーニング
業界の同業他社と比較してESGパフォーマンスがポジティブであると判断されたセクター、企業、プロジェクトへの投資。
c.規範に基づくスクリーニング
国際的な基準に基づく最低限のビジネス慣行の基準に照らして投資をスクリーニングする。
サステナビリティをテーマにした投資
持続可能性に特化したテーマや資産(例えば、クリーンエネルギー、グリーンテクノロジー、持続可能な農業など)への投資。
ESG課題の統合(Integration of ESG issues)
PRIは、これを「投資分析と投資判断に重要なESG要因を体系的かつ明示的に組み込むこと」と定義する。
② アクティブ・オーナーシップとエンゲージメント
原則2に関わるアクティブ・オーナーシップとエンゲージメントの定義は次の通りである。
アクティブ・オーナーシップ
アクティブ・オーナーシップとは、投資家の活動や行動に影響を与えるために、所有権や所有者の地位を利用すること。これは、各資産クラスで異なる方法により適用される。上場株式
の場合は、関与(委任状による)と議決権行使(株主提案の提出を含む)の両方が含まれる。他の資産クラス(例:債券)には、(委任状による)議決権行使が関連しないこともあるが、エンゲージメントは関連する。
エンゲージメント
エンゲージメントとは、投資家と現在または将来の投資先(企業、政府、地方自治体など)との間で、ESG問題に関する意思疎通(interactions)を図ることを意味する。エンゲージメントは、ESGの慣行に影響を与える(または影響を与える必要性を認識する)、あるいはESGの開示を改善するために実施される。
(委任による)議決権行使と株主提案
議決権行使は、会社側提案または株主提案による株主総会議案に関する賛否等の表明。株主提案の提出も含む。
GSIAの分類
GSIAは、下表のように7つに分類している。余計な混乱を避けるためここでは各分類の定義については省くが、表現が多少異なっていても基本的にはPRI の定義と同じである。
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