早稲田大学大学院の講座「サステナブルな事業/投融資の探求」#4

第四回目となる今回は、LIFE MAP合同会社の竹川 美奈子氏から、「個人投資家の視点から見る、サステナブル・ファイナンス」をテーマにお話しいただきました。

第一回目の総論講義にて説明のあったサステナブル投資の生態系の中では、今回は個人・市民、およびアドバイザーに当たります。

講義では主に以下に関して説明がありました。

  • 資産形成とサステナビリティ
  • サステナブル投信の現状と課題(グループワーク・発表)
  • 選択肢と考え方

についてです。

冒頭、2000年にファイナンシャル・プランナー資格取得後に独立して、講演や執筆などを通じて、個人に向けて資産形成のサポートをしていると自己紹介の後、日本では英国のIFA(独立系アドバイザー)のように明確な定義はなく、IFA(金融商品仲介業)は多数存在するが、投資助言・代理業登録をして個別商品まで踏み込んだ相談を行うアドバイザーは少数派であることや、ESG投資に詳しいアドバイザーは、現状ではそれほど多くないとの説明がありました。

次のセクションでは、個人で資産形成をしていく際に、どのようにESG投資やサステナビリティと関わっていくのかという点について、①国の制度(公的年金保険)、②勤務先(退職給付=退職一時金や企業年金)、③自分で準備する(預金や投資信託・株式等)という3層の図を用いて説明がされました。個人が③自分で準備する場合、税優遇のある制度(iDeCo、つみたてNISA)を優先的に活用しましょうと言われているとのことでした。

サステナブル投資の現状と課題に入る前に、一般に販売されている株式投資信託は約6,000本で、そのうちつみたてNISAの対象はわずか3%程度であり、①ESG指数に連動する投信は含まれないし、投資先の決定プロセスにESGを入れる等は特に考慮されていない ②海外でも成績の悪い投資信託をESGという冠をつけ直し、ブームに乗った商品の存在が指摘され始めている―といったESGの視点からの課題にも触れていただきました。日本でも、金融庁の会議でそうした指摘もあるとのことでした。

JSIFが公表をしているサステナブルな投資信託のリストから調べてみると、①2020年末時点で信託期限が無期限・純資産総額30億円以上の商品は、ETFを除くと、14本に過ぎない、②2018年以降、大型のESG関連の投資信託が設定されている傾向はあるものの、過去に設定された投資信託は資金の流出が続き、繰上償還もある③アクティブ投信の中でも、運用哲学/投資プロセスを情報開示資料に明確に記載しているファンドが少なく、中身に関しても、投資先の上位に並ぶものが大規模企業に偏りがち―など、個人がESG投資をしたいと考えたとしても様々な課題があるのではないかと解説がありました。

それを受けて、受講者間で、「実際のファンド例からどれを選ぶか、その理由は何か」というグループワークをし、各々の代表から発表がありました。講師と受講生双方からは、個人が投資をする場合、ESGという冠の有無にかかわらず、運用哲学の体現と納得性のある情報開示(目論見書、月次報告書、運用報告書、投資先とのエンゲージメント、情報発信)が投資信託を選ぶ際のポイントになるのではないかと声が挙がりました。拡大しつつあるESGをブームで終わらせないためにも、運用会社と販売会社の進化を求める個人の声を集め、機運を高めることも重要という指摘もあり、受講生の関心度も強く、終了しました。

※執筆担当…岡田敦(JSIF運営委員)、亀井茉莉(JSIF個人会員)

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