まとめと提言/ESG投資の定義(白書2020に掲載)#4

 話を日本の「ESG投資」という言葉に戻そう。ESG投資という言葉は、ESG integrationとESG incorporationという言葉が分かりにくいために使われ始めたようだが、その定義が曖昧になり、ESG incorporationとESG integrationの意味を理解していない関係者が増えている。その結果、最近では次のような状況となっている。

  • •ESG投資という用語が、ESG incorporationとESG integrationのどちらを指しているのか明確でないまま、議論されるケースが増えている。
  • インパクト投資についての議論の機会が増えているが、PRI分類にはない(パッシブの場合の例外はあるが)ことが理解されていない。ただし、フィデューシャリー・デューティーを満たすインパクト投資については議論されるようになっている。

 最後に、私案として次の提言をしたい。

  • 金融の専門家には、ESG integrationとESG incorporation(あるいはサステナブル投資)を明確に理解し、使い分けて議論してほしい。
  • 金融専門家だけに限らない議論では、「ESG投資」を「狭義のESG投資」と「広義のESG投資」という言葉で使い分けてはどうだろうか。

 つまり「狭義のESG投資」をPRIのESG integrationと同義とし、「広義のESG投資」をPRI のESG incorporation(あるいは多少違いはあるがGSIAのサステナブル投資)と同義と理解して使用する。 その理由は2つある。

  1. 金融の専門家以外の方が、今更ESG投資という言葉を使うのをやめるのも難しいと思える。
  2. また、現在、多くの人がESG投資という言葉を使う際には、上記の「広義のESG投資」のことを指していると思えるので、それほど都合が悪いわけではなさそうだ。

 厳密な議論が必要な際には「狭義のESG投資」と「広義のESG投資」を意識すべきだろう。

  • インパクト投資についての議論の際には、年金基金などの対象となる投資なのか、どの程度のインパクトを求める投資なのか、注意を払う。
  • なお、近年、ESG投資でのインパクトがより重視されるようになっているが、これは「広義のESG投資」の様々な投資方法にもインパクトを明確にすることが求められるようになっているということであり、上記のインパクト投資の議論とは異なることには注意が必要だ。

荒井 勝


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