早稲田大学大学院の講座「サステナブルな事業/投融資の探求」#7

第七回目は、日本取引所グループ(以後JPX)の三木誠氏、鳥居夏帆氏より「サステナブル投資家と事業会社を繋ぐ証券取引所」をテーマに講義していただきました。

第一回目の総論講義にて説明のあったサステナブル投資の生態系の中では、証券取引所に当たります。

岸上より世界最古とされるオランダの証券取引所から日本の取引所までの変遷に触れた後、講義では主に以下の点に関して、ご説明をいただきました。

  • 上場会社がESG情報開示を行うための支援活動
  • 投資家に対するESG投資関連商品の提供
  • 世界からみたサステナブルファイナンス

はじめに、JPXがESG投資に関する取り組みを進める背景は、投資家が求めているESG情報開示をサポートすることで市場がより良くなる、という見通しがあるため、というご説明から講義が始まりました。

「上場企業がESG情報開示を行うための支援活動」については、『ESG情報開示実践ハンドブック』の作成・公表や『JPX ESG Knowledge Hub』の開設、経済産業省と共同で実施する銘柄選定に触れられました。ハンドブックは、これからESGの情報開示を開始する企業が増えてきており、初めてでも取り組みやすくなるよう背景説明と共に整備されたものです。既存の情報開示の枠組みは英文が多い、という課題にも貢献されています。

ESG市場がより良くなるためには多くの投資家がESG投資を実践することが必要、という点から「投資家に対するESG投資関連商品の提供」のご紹介もいただきました。例として挙げられたのは、株価指数の選定、ETFやインフラファンド、グリーン/ソーシャルボンドです。三木氏の個人的な見解も交えたESG株価指数やグリーン/ソーシャルボンドの展開における課題についても言及いただきました。

責任投資原則(PRI)に出向兼務されている鳥居氏からは、「世界からみたサステナブルファイナンス」という観点で、各地域のサステナブル投資の市場規模、サステナブルファイナンスの市場拡大の二つのドライバーについて詳しくご説明いただきました。

ドライバーの一つ目は投資家の変化、もう一つ目は政策の変化です。特に政策に関しては、気候変動が主軸となっている点を中心に、国際機関の見解や欧・米・中の政策例を通してご紹介がありました。気候変動に対する各国の人々の受け止め方に見られる温度差、国や地域ごとの戦略の違い、という鳥居氏個人の経験談もいただきました。

また、証券取引所という観点からは、世界各国の取引所のESG投資に関する国際連携の事例のご紹介があり、各国の取引所はビジネスの側面からサステナブルファイナンスに取り組んでいるという点を特に強調されました。

岸上からは、サステナブル投資の市場規模の時代に伴う数値の扱いに対する注意点(定義や集計環境の変化など)や、学術研究と実践の深い関わりの中でPRIが始まったというエピソードなどが補足説明されました。気候変動に対して受講生の方々が感じる温度感なども実際に伺いながら、気候変動以外の観点の必要性や、政策と市場原理のバランスについても議論が進みました。

※執筆担当…亀井 茉莉(JSIF個人会員)

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