EUのサステナブルファイナンス開示規則(SFDR)のポイント #4(白書2022に掲載)

10.第7条: 金融商品レベルでの持続可能性への悪影響の開示

第7条

1項: 2033 年12 月30日までに、金融市場参加者が第4条第1項(a)または第4条第3項を適用する金融商品ごとに、第6条第3項にいう開示を行う際は、次の事項を含む。

(a) 金融商品が持続可能性の要因による主要な悪影響を考慮するかどうか、及び考慮する場合にはどのように考慮するかについての明確かつ合理的な説明
(b) 第11条第2項に従って開示される情報の中に、持続可能性要因に及ぼす主要な悪影響に関する情報が含まれていることの説明

第11条第2項の情報が、持続可能な要素に対する主要な悪影響の定量化を含む場合、その情報は、第4条第6項及び第7項に従って採択された規制技術基準の規定に依拠することができる。

2項: 金融市場参加者が第4条第1項の(b)を適用する場合、第6条第3項にいう開示は、各金融商品について、金融市場参加者が投資意思決定の持続可能性要因に対する悪影響を考慮しない旨及びその理由を含むものとする。

金融商品が持続可能性要因に関するPAIを考慮するかどうか、また考慮する場合にはどのように考慮するかについて明確かつ合理的な説明を求めるものだ。では、主要な悪影響とはどのようなものなのか。これは2022年4月に欧州委員会が採択した規制技術基準(RTS)で規定しており、次の2種類の開示がある。

I.事業体レベル(従業員500人以上のFMPs):

投資決定が、社会・従業員問題、人権尊重、腐敗防止、贈収賄防止などの持続可能性要素に与える主要な悪影響PAI RTSによると、FMPは投資先企業への投資を18の必須環境・社会的PAIに基づいて評価しなければならない。

II.製品レベル:

i. ESGあるいは持続可能な特性を持つ製品が、どのようにその特性を満たすかを示す情報
ii. 持続可能な投資目的を持つ商品が、その目的をどのように満たしているかを示す情報(持続可能な投資が環境や社会の目的を害さない(DNSHの理由を含む)、及び企業が「特に健全な経営構造、従業員関係、スタッフの報酬、税務コンプライアンスに関して、優れた統治慣行に従う」ことを評価する方針
についての情報)。

※ DNSHはEU2019/2088規制の第2条17項で定められている原則だが、RTSでは事業者は、規則(EU)2019/2088第2条(17)に言及された「著しい損害を与えない」(DNSH)という原則を遵守しなければならないとしている。

必須であるPAIについては、従業員、人権尊重、腐敗防止、贈収賄防止に関して以下のような開示を義務づけている。

 上表の最初の2つの指標は、これらの原則とガイドラインに対する違反と遵守を監視するプロセスの実施の両方を扱っている。企業のパフォーマンス(及びその影響)だけでなく、人権やガバナンスのリスクや影響(例えば、汚職、課税、公正な競争)を回避し、それに対処するために実施されるプロセスも対象としていることを意味する。これは、企業のパフォーマンス(影響)だけでなく、人権やガバナンスのリスクと影響(例えば、汚職、課税、公正な競争)を回避し、それに対処するために実施されるプ
ロセスも対象としている。

11.持続可能な投資とは?

現状で筆者がSFDRについて理解しておいた方が良いと考えた点は以上であるが、一つ重要な点が抜けている。持続可能な投資の定義である。これはSFDRではなく、EU規則2019/2088第2条(17)で、次のように規定している。

「持続可能な投資とは、例えば、エネルギー、再生可能エネルギー、原材料、水、土地の使用、廃棄物の生成、温室効果ガスの排出に関する主要な資源効率指標によって測定される、環境目標に貢献する経済活動への投資を意味する。また、生物多様性や循環型経済への影響によって測定される。あるいは、社会的目標に貢献する経済活動への投資、特に不平等への取り組みに貢献する投資、社会的結束、社会的統合、労使関係を促進する投資、人的資本や経済的・社会的に不利な立場にあるコミュニティへの投資などである。ただし、そのような投資がこれらの目的の投資先企業の、特に、健全な経営構造、従業員関係、従業員の報酬、税務コンプライアンスに関して、いずれも著しく損なわないこと」。

荒井勝


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