第九回目となる今回は、株式会社日本政策投資銀行 の福吉 隆行氏が「ESG金融における銀行の役割について―サステナブルファイナンスの現場より―」をテーマとしてお話しくださいました。第一回目の総論講義にて説明のあったサステナブル投資の生態系の中では、今回は銀行に当たります。
講義では3つのパートにわけて説明がなされました。
- 銀行のビジネスモデル―サステナビリティのための金融の本質―
- 日本政策投資銀行 (DBJ) の取り組み―非財務情報(または未財務情報)を考慮した評価認証型融資―
- まとめ:社会課題の解決のために、銀行に何ができるか
についてです。
銀行の本質的な役割から紐解き、元来社会的・公益的インフラの役割があること、ESG金融は、外部不経済と情報の非対称性の解消に繋がる点が指摘されました。またリスクと不確実性の違い、直接金融(投資家)と間接金融(銀行)における情報の主体/発信者の違いにも触れ、それらがESG金融にどういった影響を与えるか、「非」財務情報を活かすにはどうしたら良いかといった点が示されました。
次に、DBJの評価認証型融資として、環境格付のみならず、経営上重要な非財務リスクを扱うBCM(防災・危機対応)・健康経営格付融資の概要が説明されました。利用者の利点としては、社員の理解促進につながる内部管理への活用、CSR面のアピール、金利の優遇等が挙げられました。
まとめとして①(上場株式を対象とすることが多い)「ESG投資」の届かないところへ貢献する機能、②直接金融と異なる、銀行取引関係の本質的価値を活かす、といった、銀行がサステナビリティ生態系の中で発揮できる可能性について提示されました。この中で、 責任銀行原則(PRB)等の国際イニシアチブに触れ、銀行セクターにおける昨今の急速なサステナビリティの動きと課題が示されました。
改めてコロナ渦中における銀行の役割、将来的な銀行像や、日本の地方銀行のESG投資の取り組み、第二回講義でも触れられ、福吉氏が創設に携わったDBJグリーンビルディング認証など多様な質問にお答えいただきました。
※執筆担当…御代田有希(JSIF運営委員)