早稲田大学大学院の講座「企業の社会的責任と責任投資」#10

第十回目となる今回は、気候変動に関するアジア投資家グループ(AIGCC)の古野 真氏が「国際NGO:敵か味方か?個別課題における専門団体」をテーマにお話しくださいました。第一回目の総論講義にて説明のあったサステナブル投資の生態系の中では、今回はNGO/NPOにあたりますが、業界団体・投資家団体にも近い存在としてご紹介いただきました。

講義では4つのパートにわけて説明がなされました。

  1. 気候変動に関するアジア投資家グループ(AIGCC)の紹介
  2. NGOの定義・役割・分類
  3. 金融・ESGに関わるNGOの分類
  4. NGOとの連携のあり方

についてです。

気候変動に関するアジア投資家グループ(AIGCC)は、気候変動及び低炭素投資について主に投資家と各国政府との対話を推進することを目的とし、現在11か国から42の署名機関が参加しています。(2012年に設立された気候変動に関するグローバル投資家連合(GIC)の中で、AIGCCはアジア地域の投資家を代表しています。)

まず当団体の活動として、①意識向上・知見共有として国際会議等の開催、②投資行動の向上のためのツール・ガイダンスの提供及び協働エンゲージメント、③政策提言、④国際イニシアティブ(Global Investor Coalition、Investor Agenda、Climate Action 100+(CA100+))の4つの領域が説明されました。

続いて、NGOには様々なタイプがある中で、金融・ESGに関わるNGOの分類として、①シンクタンク、②第三者評価機関、③市民運動・直接行動型、④株主アクティビストという分類がなされました。

企業によるNGOとの連携としては、①従来型慈善団体(対弱者・地域)については支援、②政策提言型(対政府)については情報提供・共同研究、③企業の説明責任(対企業)についてはステークホルダーの対話という形態における可能性があるとされました。いずれのNGOについても、SDGs/ESG/ステークホルダー資本主義の時代に適した多様なパートナーシップのあり方が模索されます。

続いて、勢いを増す業界団体・国際機関やNGOとESG投資家の協働の事例として、Climate Action 100+(CA100+)の事例が取り上げられました。161社に対し450の投資家から気候変動に関する協働エンゲージメントが行われており、全世界の投資家が協力してAIGCCを含む各地域の投資家団体が事務局を努め、専門性のあるNGO・シンクタンクの能力を活かしながら活動している新しい取り組みである点が強調されました。

以前はNGOとの対立、または対話を中心としていたが、次のステップとしては更に一歩踏み込んだ協働が求められているという視点が示され、時代と共にNGOとの付き合い方が変化していることが実感できる貴重な会となりました。

※執筆担当…御代田有希(JSIF運営委員)

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