早稲田大学大学院の講座「サステナブルな事業/投融資の探求」#14

第十四回目は、今期最後のゲスト講師として、ブルームバーグNEFの黒﨑美穂氏より「エネルギーから広がるESG」をテーマに講義していただきました。

第一回目の総論講義にて説明のあったサステナブル投資の生態系の中では、脱炭素に特化したデータ収集と分析を行う研究機関に当たります。尚、現在では首相官邸向けの気候変動推進のための有識者会議に携わっている立場から、政策提言や政府との関わりに関しても一部ご紹介頂きました。

講義では以下の点に関して、ご説明をいただきました。

  • 脱炭素の動向とステークホルダーの役割
  • 日本における脱炭素の目標と行動変容の考え方
  • サステナブル・ファイナンスの動向と脱炭素

はじめに、黒崎氏より、脱炭素に特化した分析を実施するブルームバーグNEFの紹介がありました。過去からの積み重ねにより気候災害が発生しており、気候変動目標値を1.5℃にするために、急速な二酸化削減が求められている現状が述べられました。

そして、脱炭素に向け、政府、金融、消費者、企業という立場から何ができるかを考えるというのが全体の主旨であるというお話がありました。

次に、グローバルな気候変動の動向では、今年11月に開催予定のCOP26に向け、(現在の世界の二酸化炭素排出量の半分程度を占める国々によりカーボンニュートラルが宣言されていますが)2030年の中間目標が注目される点や、G7だけでなく発展途上国における1.5℃シナリオによる具体的な政策が必要である点が指摘されました。また、当社によるG20諸国の政策評価(スコアボード)が示され、日本の当面の課題としては、化石燃料への政策が弱い一方で、サーキュラーエコノミーが進んでいる点が評価できるとの解説がありました。

続いて、日本の排出量の内訳を確認したうえで、日本は何をすべきかが議論されました。まず、電力については、震災以降化石燃料の使用が増えていることから、優先課題としては再エネの主力電源化があります。コストに関して、新設発電所にて再エネが最安の国は世界の3分の2に増加し、再エネを経済的に選択する動きが広まるとされています。その中で、日本の政策としては、カーボンプライシングの導入、規制緩和による再エネの推進が重要です。また政策以外では、企業のネットゼロ目標、再エネ調達や、金融・投資家によるエンゲージメントが必要不可欠になってきています。

次に、産業における脱炭素は電力以上に難しいとはいえ、2030年までの優先順位を挙げれば、エネルギー効率を高めることや電化と再エネの導入、リサイクルがあり、2030年以降に水素等などがあり、それぞれのフェーズで何ができるかを考えるのが有効であるかという議論がありました。また、調達における再エネ化を求めるグローバルな大手企業のサプライチェーン上にある日本企業は取り組まないことによるビジネス・リスクが既に発生してきていると同時に、現状の国内再エネ供給ではRE100宣言企業の実現も難しく、個別企業を超えた早急な対応の重要性が提示されました。

金融に関しては、サステナビリティ・リンク・ローンなどのサステナブル・ファイナンスの拡大傾向を歓迎する一方、環境や社会へのadditionalityをより明確にする必要性も取り上げられました。また、投資家によるエクソンモービル社へのエンゲージメント・議決権の例のように、ネットゼロの社会に向けて、経営の変化を求める投資家の動きが紹介されました。

最後に、政府、金融、個人など各ステークホルダーとしてどう行動すべきかという議論を受講生と共に行いましたが、授業担当の岸上とゲスト講師の黒崎さんが2007年より深く気候変動と投資の流れに関わってきたことより、その当時と現在の流れの違いなどに関しても意見が交わされました。

※執筆担当…御代田有希、岡田敦(JSIF運営委員)

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