早稲田大学大学院の講座「企業の社会的責任と責任投資」#12

第十二回目は、担当講師である岸上有沙氏より、受講生がもう一度整理したい点などを中心に講義が行われました。
まとめ講義1.では、以下の内容にフォーカスが当てられました。

  1. サステナブル事業・ファイナンスにおける研究(者)の重要性
  2. ESG評価に関わる大整理
  3. サステナブル事業・ファイナンス事例 – 食品業界より

サステナブル事業・ファイナンスは比較的新しい分野であるために、企業が社会的な活動に取り組む根拠およびリスク・リターンとの関係性を含め、様々な観点からの事例・データの収集および分析が求められ、研究の重要性が増しています。これについてはPRI勤務後に博士課程においてESGを研究している御代田からも、近年急速にCSR・ESGに関する研究が積みあがってきている点、PRIのデータベースが活用できることを紹介しました。

また、独立した研究機関での研究者に役割に加え、多様なESG課題への取組みに対し多様な視点を持つ人財の活用が必要である点が指摘されました。実例として、生物学、地域研究、リテール業、コンサルタントなど、様々なバックグラウンドを持つ人がESG評価軸・インデックスの作成や企業エンゲージメントに携わっている点が紹介されました。また「一人の博士課程の学生から生まれたPRI」としてジェームズ・ギフォード氏の例や、研究者に刺激を受けたサステナブル投資従事者の例が紹介されました。

続いて、これまでの講義を受けて、受講生からも質問の多かったESG評価の整理として、FTSEで携わった経験を中心に担当講師である岸上氏が説明しました。
ESG評価に携わる各機関の性質、信用格付とESG評価の違い、詳細なメソドロジーについて解説がありました。評価にあたっては既存の国際枠組が使用される点や、一つの課題についても顧客である投資家の意向が異なり、また時代によっても変遷してきている点が示されました。

また、新しいESG課題をどのように察知して企業活動と投資行動に反映させていくか、という点について、アニマルウェルフェアに対する取り組みを含み、 食品業界にフォーカスを当てた事例が紹介されました。

10回のゲスト講師を交えた講義をふまえ、研究と実例を通じた全体像の整理の機会となりました。

※執筆担当…御代田有希(JSIF運営委員)

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